1 君と歩く、翡翠の道 ♯1

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「うーん……これは、ニワゼキショウじゃないかな?」 不意に視界に影が落ちて、背中越しに聞こえてきた男子の声に頭を上げる。 「このお花、ニワゼキショウっていうの?」 「俺も自信は無いんだけど、たぶん合ってると思うよ? 基矢(もとや)に聞けば確実なんだろうけどねー」 「残念ながら、今ここに居ないからね」と、私を覗き込みながら、ふんわり笑うのは高階郁水(たかしな いくみ)くん。 「え? 一色(いっしき)くんって、お花に詳しいの?」 「うん。基矢のヤツ、こういう野草や高山植物をウォーキングがてら調べるのが趣味なんだ」 「へぇ……。一色くんが……」 高階くんの言葉に、一色くんの姿を思い浮かべる。 ふーん、あの一色くんがお花好きとは意外。 ふふっ。一体どんな顔して、お花を見て回ってるのかしら? 私の知る一色基矢(いっしき もとや)くんは寡黙で真面目。 それで、私たちよりもちょっと大人な雰囲気で。いつも少し下がったところで皆を見守ってるイメージだ。
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