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ピピピピ ピピピピ
「.........3分か......」
もう見慣れたカップ麺のフタを最後まで開けきる。
テレビからは必死に笑いをとろうとおどけてみせるお笑い芸人たちがギャグを連発している。
僕は何を見るでもなく何度かチャンネルを切り替えた。
どの番組からも騒がしい音が絶えず流されている。きっと次のチャンネルも....
「.........っ!」
そのとき、部屋に厳然とした静寂が訪れた。
「................宇宙..........」
宇宙。それは果てしなく広がる無限空間。
さっきまでの騒音はどこへやら、部屋には一気に神聖な空気が流れ出したかのようにさえ感じる。
僕はしばらく小さなテレビに映る大きな宇宙を見つめていた。
惹かれていた...という方があっているかもしれない。
この世界も、人間も、自分も、何一つ大嫌いな僕にだって好きなものくらいある。
ーー...それが宇宙だ。
箱の外の世界。
おそらく自分は一生行くことのできない場所。
嘘も偽善もなく、ただただ真空という極限の無が広がるすばらしい空間。
幼い頃の衝撃は忘れない。
あの開放感に似た希望の感覚。
今度こそ僕は箱の中から脱出できると思っていた。
まぁ、そんなことは無理だと気づいたのだが、今でも宇宙は好きだ。
人類が持っているたった一つの希望だと思う。
この箱を飛び出して宇宙まで行けたらどれほどいいか...。
きっと全てが光り輝いてみえるだろう。
....だが、このことを人に話したことは一度もない。
それこそこんな話ができる関係の奴はいないし、僕史上最大の恥体をさらすことになるからだ。
この歳で、「天体になるのが将来の夢」だとか言ってみろ。
もともと終わりかけている人生が完全にシャットアウトだ。
取り返しがつかなくなる。
まず頭いかれてると思われるだろう。
...それはそうだよな。
サッカー選手だとかそういう普通の将来の夢とは掛け離れすぎているもんな。
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