a lingering scent of

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恐る恐る目を開けると、未だに近くに見える宮瀬の顔。 そして感覚として伝わったのは自身の手から感じる宮瀬の体温だった。 「え?」 「凜はキスしようとする時、俺の胸元を押す癖がある」 「・・ぁ、本当だ」 手首を掴まれた自分の腕は弱弱しくも宮瀬の胸元に触れていた。 それは嫌だからとか、そういう訳ではなかったものの、癖だと言われた手前わりと多くの頻度でそれをしていたのだろう。 その行動が宮瀬がキスを躊躇う原因を作った。 「俺とキスするのは嫌か?」 「そ、んなこと・・ありません」 「じゃあ何で押し退けようとする?」 キスのタイミングは毎回否応にも分かってしまっていた。 その時に首に腕を回せる度胸があれば、こんな質問を受けることは無かっただろう。 ただ、伸びる腕は宮瀬の胸元より高くは上がらない。 「別に押し退けようとしてるわけじゃ・・」 「じゃあ、何?」 「分からないです。反射的にだと思います」 「嫌な訳ではないんだな」 掴まれた手首はそっと離され、支えのなくなった腕がだらしなく落ちる。 宮瀬に浴びせられた言葉に黙って頷くと、ふわっと笑ったその唇が今度は確かに重ねられた。 そして、誤解を招いた自分の腕はその胸に触れることはなく、ただ自身の服の裾を強く握りしめる。 「凜」 呼ばれる名前も絡めとられる舌先に神経を持っていかれ、殆ど耳に入らない。 さっきまで吸っていた煙草の味が匂いだけでなくその唇からもはっきり伝わった。 「・・んっ、煙草の匂いがしますね」 「さっき吸ったからな」 「苦い」 「でも、嫌いじゃないだろ?」 そう言って角度が変えられもう一度唇が触れた。 苦味に似た煙草の味は脳が慣れたのかもうよくわからない。 ただ、離れていく舌に名残惜しさを感じ離れたそのタイミングで宮瀬の胸に抱き着いた。
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