桜色の宵

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「お世辞を有り難うございます。 子どもの頃、アレルギーがひどかったので……顔に塗るの苦手なんです。」 にこりともせずに私は返した。 早く会話を終わらせたかった。 「そうか、いや、ごめん。本気でそう思ったからさ。 樫井さん綺麗だし、スタイルもすごくいいじゃない? 足長いし。あ、それ化粧関係ないか。 とにかくさ…… 化粧したりしたら映えるんじゃないかなと…… あ、これ、セクハラになる?」 目を見開いた私に彼は焦って顔色を 窺ってきた。 一体いつ、私のスタイルを見ていたのだろう? いつもからだの線が出ない、地味な服しか身に付けていないのに。 地味な私にまで気配り? 「いえ。……ただ……領収書。 出来れば定時時間内に頂きたいです。 お疲れ様でした。」 ここはとりあえず流しておこう。 「うん、ごめん。……桜ちゃんっ。」 「!!……」 「あ、ダメ?桜ちゃん。可愛い名前だからさ。 実は前から呼んでみたかったんだ。」 彼は屈託なく笑う。
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