桜色の宵

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名前を呼ばれて 心臓が跳ね上がったのを隠し、 努めて冷静に返す。 「……いえ、よく名前を知ってたなと。 ……好きに呼んでください」 手渡された領収書の数は全部で7枚。 処理は明日の朝でも間に合いそうだ。 鍵付きの棚に仕舞うと これ以上彼と話す必要はないだろうと 席を立つ。 フロアにはもう数人しか居ない。 「あー、えっとさ、桜ちゃん。」 まだ何か?の気持ちを込めて、 顔も見ずに返事をした。 「はい?」 「良かったら、今日呑みに……いかない? いつも領収書やら頼んでるからさ。 俺ら、チームでこれから呑むんだけど、一緒に。」 (……面倒だ。まさか、このキラキラ男と 呑むなど有り得ないのに。) 「今日は予定がありますので。」 私は鞄を手にすると、彼に一礼し そそくさとフロアを後にした。
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