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初めは拒もうとしたティーチだったが、今まで国を転々としてきたティーチには自ら手を差し伸べてくれた町に恩義を感じていた事、そして今向かっている廃村を根城とする山賊が自身に対等に話しかけてくれた数少ない好感の持てる人物、パウロの両親の仇と知り、重い腰を上げたのだった。
廃村に侵入したティーチは物陰に潜みながら敵の戦力を把握した。人数は5人と少なく、武器を持っている様子はない。加えてリーダーと思われる人物が見当たらない事を確認するとティーチは敵地に飛び込んだ。不意打ちで2人を倒し大鎌を構える。大鎌の巨大な刃がみるみる赤く染まり5人の山賊が息絶えていく……それはまさに一瞬といっていいほどに短時間の出来事であった。しかし次の瞬間、銃声が鳴り響く。咄嗟に体を傾けた事で頬へのかすり傷ですんだティーチが振り返ると十人の山賊と銃を持った親玉と思われる男が彼をとり囲んでいた。
「クク…驚いたか?今ではこうも手入れのされた銃はそうそうお目にできないからな。ま、お披露目はここまでだ。お前に使う弾はもうないぜ」
鈍く輝く銃をなでながら山賊の親玉と思われる男はニタリ笑った。悪趣味に輝く服を着、左耳にはどこかで見覚えのある赤い宝石の入ったピアスをしている。小柄な男だが、先程の狙撃を見るに銃の扱いには手慣れている。彼が手を挙げると待っていたと言わんばかりにティーチを囲んでいた10人の山賊が刃物を手に襲いかかってきた。
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