第2章山賊退治

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一瞬だが、自分たちに勝機がない事を感じてしまった彼は部下を留める力さえも失ったのだ。しかし、部下が家の角を曲がった所で彼らの悲鳴と鈍器の音、そして人の倒れる音が響いた。恐らく山賊の物であろう血のついた木の棒を持って現れたのは町で出会った少年、パウロだった。 「分かるよ……お前が……オイラの仇だ」 パウロは瞳を涙に滲ませ、震えながらも毅然とした声で言った。無理もないだろう。まだ少年である彼にとって人と戦う事も、聞かされた真実もその全てが酷なものである。だが、戦いは終わってはいなかった。まだ、山賊には親玉が無傷のままで残っているのだ。親玉は考えていた。この場をどうすれば逃げきる事ができるのか・・・・・・残された武器は2つの弾が入った拳銃のみである。彼にとってパウロの出現でティーチの注意がそれている今は唯一無二のチャンスと見えた。意を決してティーチに向けて玉を放つ。しかし、ティーチはこれを簡単に避けてしまう。 「そ……そんな馬鹿な……」 タイミング、距離、常人の反射速度の間に合う弾ではなかった。 「糞が!」  咄嗟に親玉は狙いをパウロに変え、最後の銃弾を発射した。ティーチに勝てないと悟った親玉はパウロを傷つけた隙に逃げる事を考えたのだ。パウロの頭部にめがけて凶弾が迫る。震えるパウロはなす術も無くただただ瞳を大きく見開き、自らに迫る弾を見つめて立ち尽くした。親玉は少年の死を確信し、ティーチの出方を探ろうと向きを変える。
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