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しかし、そこにはすでにティーチの姿はなかった。ティーチは銃弾がパウロに向けられるより早く彼に駆け寄り、銃弾がその頭を貫く寸前の所で体を自分に引き寄せた。銃弾はパウロを避け廃村の看板に当たり、看板を空しくキィキィと揺らしただけだった。パウロを助けたティーチが親玉を睨む。
「何故だ?何故お前がそこにいるんだ!!」
明らかに間に合わないはずだった。ティーチの距離から考えても、パウロに向けられた銃口をみて助けるのは不可能な距離があった。しかし、彼には分っていたのだ。親玉の思考が……次の動作が予測出来ていたのだ。そして、ティーチは言った。
「教印……この紋は王国時代の教育者が考案した異能を人に与える紋。俺の家系が願った事は決して争い、復讐の為の力ではない。欲っしたのは迫害され続けた生活で失った人を信頼する自信、その為に得た読心【リーディング】の力だ。撃つ場所が分かれば周り込む事など容易い」
ティーチは続けた。
「お前の銃とピアス……10年前にこの村を襲った時の物だな?パウロ……こいつがお前の本物のカタキだ……どうする?」
ティーチはパウロを試すようにそう言うと彼の顔を眺めた。パウロは親玉を睨む。完全に戦意を折られた親玉は少年にさえ脅え、声の一つもでない様子だった。
「オイラもうわかんないよ。だってこいつらは許せない!だけど・・・・・・さっきはじめて人を殴った。全然いいもんじゃなかった。こんな奴の為にもう……嫌な気持ちになんかなりたくも……ないよ……」
パウロはそういうとまた、潤んだ目を強く擦った。
「いい答えだ」
ティーチは短く、それでいて優しくそう言うとパウロの頭をなぜて後は任せろと小さく呟いた。そして親玉に向けて言った。
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