プロローグ

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偽りの情報は想定以上の速さで国に浸透した。災害後、実質的に支持を集めていた教育者達の状況が説得力を肥大させ、災害による不満の捌け口としての思想が情報の真否を問う思想を圧倒してしまったのだ。災厄より10年の後、教育者は国を追われ、その姿を見る事も無くなる。教育者の名を口にするものはなく、今だ教育者狩りの条例は撤廃されずにいる。それは復讐に恐怖した国民の総意でもあった。 文献を追っての歴史はここから酷く曖昧になる。しかし、私が集めた情報から推測するに恐らくホライズンの滅亡は以後数年の出来事であり、原因は以下のものと想像出来る。 原因1.災害による影響 原因2.教育者とともに魔法の力を失った事による生活苦 原因3.人を迫害した事により国民同士に起きた不信感、国政の悪化 「ふぅ・・・・・・書いていて気味のいい話ではないな。まぁ・・・・・・災害の傷も多くが癒えた今でも教育者に関するタブーはいくつも残っているんだから、ただの歴史として片付けられる事でもない・・・・・・かぁ」 男はペンを置くと自嘲気味に笑った。そして、もし教育者に生き残りがいたらと心境を考え、更に深いため息をついた。 「そりゃあ・・・・・・怨むよなぁ」 生きている・・・・・・その場合、恐らく問題は解決してはいないのだ。今となっては災害の影響もないとはいえ、差別だけは残っているのだから。 「迫害した者の恐れが新たな悲劇の扉を開いた・・・・・・か。不幸にもその被害者はどちらも彼ら教育者達だったという事だな」  もっとも、多重の被害、迫害によって滅んだ民族やそれらの存在など今に始まった事ではない。新旧史実の中には更に凄惨な悲談も少なくは無い。男はもう一度笑みを作ろうとしたが、今度は作り笑いにもならなかった。
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