11人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
が、通路側に座っていた男性客が立ち上がり、こちらに向ってきた。しかも縦にも横にもでかい。
無駄にでかいぞこの男。
前が見えない。向ってきた男が俺を邪魔そうに見るため、俺は体を横にし通路を譲った。
直ぐに通路の方を振り返るが、いない。
あれ?どこだ?
頭だけを左右に振ると、今度はカウンター側の仕切りに、女の子の頭部が見えた。
いた。っていうかいつの間に反対側に?こうなると意地だ。
俺は、窓側の通路を素早く移動し、カウンター側の通路へと回り込もうとした、その時だ、
「やめた方がいい」
声と同時に、俺は急に右手首を掴まれた。
振り返ると、そこにはメロンちゃんがいた。相変わらずの無表情な顔でこちらをジッと見ている。
やめた方がいい?何の事を言ってるんだと思ったが、直ぐにそれが、俺が女の子を追い掛け回している事だと悟った。何だか気恥ずかしくなる俺。しかも注文をまたせたままだと気がつき、俺は急いでメロンちゃんに頭を下げた。
「す、すみません、すぐに持ってきます」
掴まれた手を振りほどき厨房へと急いで向う。が、また掴まれた。
何なんだ一体。
俺はちょっとムッとしながらも振り返り、
「すみません今すぐお持ちしますから」
と言って、再びメロンちゃんの手を振りほどこうとした。しかし、メロンちゃんは俺の手首を離すまいと、今度はしっかりと掴んでくる。
「あの、離して、」
俺がそこまで言いかけた時だった。
「逃げて、見つかった」
「はあ?」
訳が分からない。何に見つかったと言うんだ。
俺が困惑していると、メロンちゃんはめいっぱい背伸びをし、俺の耳に口を近づけ、囁くような声で言った。
「さっきから追い回してるみたいだけど、あれ、頭だけですよ。子供の生首が浮遊してる。自分に気づく人を探してるみたい」
「なっ……!?」
頭から冷水を掛けられたかのように、全身の血が凍りつく。同時に背後から、
「ヒヒ……」
と、地の底を這うような、不気味な声が響いた。
引きつり強張った顔で僅かに振り向く、仕切りから、少女の顔が上半分だけ飛び出し、こちらを凝視していた。
最初のコメントを投稿しよう!