深夜喫茶「徘徊者」

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が、通路側に座っていた男性客が立ち上がり、こちらに向ってきた。しかも縦にも横にもでかい。 無駄にでかいぞこの男。 前が見えない。向ってきた男が俺を邪魔そうに見るため、俺は体を横にし通路を譲った。 直ぐに通路の方を振り返るが、いない。 あれ?どこだ? 頭だけを左右に振ると、今度はカウンター側の仕切りに、女の子の頭部が見えた。 いた。っていうかいつの間に反対側に?こうなると意地だ。 俺は、窓側の通路を素早く移動し、カウンター側の通路へと回り込もうとした、その時だ、 「やめた方がいい」 声と同時に、俺は急に右手首を掴まれた。 振り返ると、そこにはメロンちゃんがいた。相変わらずの無表情な顔でこちらをジッと見ている。 やめた方がいい?何の事を言ってるんだと思ったが、直ぐにそれが、俺が女の子を追い掛け回している事だと悟った。何だか気恥ずかしくなる俺。しかも注文をまたせたままだと気がつき、俺は急いでメロンちゃんに頭を下げた。 「す、すみません、すぐに持ってきます」 掴まれた手を振りほどき厨房へと急いで向う。が、また掴まれた。 何なんだ一体。 俺はちょっとムッとしながらも振り返り、 「すみません今すぐお持ちしますから」 と言って、再びメロンちゃんの手を振りほどこうとした。しかし、メロンちゃんは俺の手首を離すまいと、今度はしっかりと掴んでくる。 「あの、離して、」 俺がそこまで言いかけた時だった。 「逃げて、見つかった」 「はあ?」 訳が分からない。何に見つかったと言うんだ。 俺が困惑していると、メロンちゃんはめいっぱい背伸びをし、俺の耳に口を近づけ、囁くような声で言った。 「さっきから追い回してるみたいだけど、あれ、頭だけですよ。子供の生首が浮遊してる。自分に気づく人を探してるみたい」 「なっ……!?」 頭から冷水を掛けられたかのように、全身の血が凍りつく。同時に背後から、 「ヒヒ……」 と、地の底を這うような、不気味な声が響いた。 引きつり強張った顔で僅かに振り向く、仕切りから、少女の顔が上半分だけ飛び出し、こちらを凝視していた。
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