深夜喫茶「二杯の珈琲」

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次の日…… その日の夜。俺はいつもにように、深夜帯の夜勤についていた。 客は一人、メロンちゃんだけだった。 俺は珈琲を二杯入れると、窓側の席に向った。 「何を、しているんですか?」 声の方に振り向く。メロンちゃんだった。席を離れ、すぐ隣まで来て、俺の顔を見上げている。 「珈琲、お代わり入れるって約束したから……」 そう言って俺は、昨夜老夫婦が座っていたテーブルに、珈琲カップを二つ、そっと置いた。 「何か意味があるのですか?」 相変わらずの無表情な顔で、メロンちゃんが言った。 意味?意味など無い、ただ、 「そうしたいだけ。俺の気が晴れるだけさ……」 そう、理由など無い。理由など要らない 美味しい二杯の珈琲と、大好きな景色がそこにあれば、それでいいじゃないか。 その日メロンちゃんは、昨夜老夫婦が座っていたテーブルに座りなおし、誰もいないはずの席で一人、見えないはずの何かと、外の景色を眺めながら、朝まで過ごした。
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