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はっきり言おう。この子が絡むとろくでもない事ばかりなのだ。
が、それでも彼女はこの店のお得意さんだ。
店の顔を潰す様なマネはできない。
「な、何がって?」
ぎこちない笑顔を向けて返事を返す。
「気持ち悪いです」
ほっとけ。
「え、と俺、仕事に戻らないと」
そう言ってカウンターを離れようとした時だった。
「あれは、あまり良くないですよ。気をつけて……」
「えっ?」
なんだ今の言葉は?そう思いメロンちゃんを見るが彼女は既に、テーブルに置かれたノートPCで何やら作業を始めていた。
俺は直ぐに彼女が言ったアレ、という言葉を思い出し、カウンター前のテーブル席に目をやった。
が、次の瞬間、首に何か冷たい物を押し当てられたかのように、俺は肩をビクリと震わせた。手足から血の気が引いていく。
テーブルには、誰も居なかった。
始めからそこには、何もいなかったかのように。
「ご協力感謝しました」
突然の声に振り向くと、そこにはさっきのスーツの男達がいた。
手には紙袋をぶら下げ、軽く会釈した後に、店を出て行った。
「中尾君?」
俺を呼ぶ店長の声。見ると事務所から体半分を出して、こちらに手招きしている。
おそらくさっきの件についてだろう、俺は呼ばれるまま事務所へと向かった。
中に入ると予想通り、店長の用件は、先ほどの男たちの事だった。
正式な捜査依頼があり、店内の監視カメラの記録を提供してほしいとの事だったらしい。
しかし問題はここからだ、何と事件の事は一切明かせない、しかもこの事は他言するなと、念書のようなものも書かされたというのだ。
というか店長、既に俺に他言しているんだが……
ともかく、今後またあの二人が来る可能性もあるという事で気をつけておいてくれと、店長から頼まれた。
と、言われても何に気をつければいいんだ?とも思ったが、とりあえず適当に返事を返し、俺はその場を後にした。
やがて朝を迎え、俺は家に帰宅した。
何だか長い夜だった。
変な刑事は現れるし、見ちゃいけないものまで見てしまった。
おかげで頭の中はぐちゃぐちゃだ。
俺はシャワーを浴び缶ビールを1本開けると、これ以上何も考えたくないのもあって、直ぐにベッドにダイブした。
意識がまどろんでゆく。
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