深夜喫茶「レッドパージ・赤の亡霊」

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灰色の空に、黒煙が立ち昇る。 どこか陰鬱な風景。 人々は手に武器を持ち、口々に何か叫んでいるのだが、何も聞こえない。 若い男が火のついたビンを投げ、地面に落ちた瞬間、辺りが炎に包まれる。 燃え盛る人々。必死に火を消そうとする仲間たちに、武器を持った人たちが容赦なく襲い掛かる。 場面がかわる。 黒い、辺り一面が黒い。 洞窟のようなとこを抜ける。人が一人立っていた。男だ。顔がハッキリしない。 俺に向かって何か叫んでいる。 男は怒っている。俺は、男にゆっくりと手を伸ばした…… 場面がかわる。 暗い部屋の床に扉があった。 重々しい鉄の扉。 その扉の前に、壷が置かれている。 壷に近づき、中を覗き込む。 次の瞬間、 うわぁぁぁぁぁぁぁっ!! 「うわぁっ!?」 俺はそこで飛び起きた。 夢? ベッドからフラフラと立ち上がると、冷蔵庫にあったペットボトルの水を取り出し、一気にのどに流し込んだ。 器官に入り咳き込むが、構わず水を流し込む。 全部飲み干して一息つくと、俺は冷蔵庫の前にそのまま座り込んだ。 夢の中、仄暗い部屋の中にあった壷。あれは、 あれは何だ?俺は何を見た? 思い出せない。思い出そうとすると激しく頭が痛む。 「つぅ……最悪」 俺はこめかみを押さえながらのそりと起き上がると、よろよろとした足取りで部屋に戻り、 そのままベッドに倒れこむようにして、再び深い眠りについた。 「で、起きたら頭痛はするわで最悪だった」 「ふ~ん。変な夢だね~」 翌日、俺はいつも通りバイトに来ていた。 昨日とうってかわって客も少なく、暇を持て余していた俺は、何となく昼間見た夢について、 厨房にいる相方に話をしていた。 「それさ、学生運動とかじゃない?」 「学生運動……?」 「そうそう、知らない?昔、」 「あ、いや、一応知ってるけど……待てよ、確かに、夢で見た奴らの服装とかそんな感じだったな……」 学生運動とは、時代や個別学校によって様々なものがあるが、代表的なものとして、反戦運動、学費値上げ反対運動、学生会館の自治要求など、活動家と呼ばれた生徒を中心に行われていた運動だ。
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