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ん?ちょっと待て、その質問はおかしくないか?
女性は何も答えていない。なのになぜその質問を?もしかして俺に聞こえないくらい小さな声でやり取りしているとか?
俺は距離を縮めるようにテーブルに近づき、聞き耳を立てた。
「なるほど。確かに、外にはたくさんの人が行き交ってますもんね。朝になればこの倍くらいはいるのかな」
えっ?今度は変な受け答えだ。それに女性は間違いなく何も喋っては、その時だった。
メロンちゃんと女性が座る席の正面、誰も座っていないはずの席なのだが、そこにある窓ガラスには、うっすらと、白いワンピースの女性が映って……
「うわぁぁぁっ!?」
思わず叫び、俺はその場でこけそうになった。何だ今のは!?
目を凝らしもう一度窓に目をやる。何も映っていない。
錯覚?目をこすりもう一度見るが、やはりそこには何も映ってはいなかった。
「ではどうしても駄目ですか?」
再びメロンちゃんの声。もはや意味不明だ。俺にはさっぱり分からない。
頭の中がオーバーフロートし、もはや投げやりな状態になっていた。どうにでもなれの気分だ。
「あの?」
突然の声。どうやらこれは俺に向けて発した声のようだ。
「あ、はい?」
間の抜けた声で返事を返す。
「どうも交渉には応じてくれないようです」
「こ、交渉?」
何を言ってるんだこの人は。何だか女性とメロンちゃんが同類に見えてきた。明らかに二人とも異常だ。
「この子は諦めてもいいそうですが。それ以上はだめだそうです。どうしますか?この子だけでも開放してもらいますか?店はそれで落ち着くと思いますけど、」
それを聞いて、俺は多少安堵した。とにかく今はこの状況から開放されたい気持ちで一杯だ。
店が落ち着くならそれでいい。
「よく分かりませんがそれで、それでお願いします!」
藁にもすがる気持ちだった。するとメロンちゃんは顔色一つ変えず無表情なまま、
「分かりました……」
と、一言だけ呟いて、何やら窓の外を指差し始めた。
窓の外、通りすがる通行人が、指を指された事に対して、不思議そうな顔をして店内に奇異の目を向けてきた。
俺はすぐにその通行人に頭を下げた。
もはや営業妨害レベルだ。
そう心の中でぼやくと、突然、
「うわぁぁんっ!」
女性の泣き声だ。さっきとは違い、一般女性の泣き声に近い。
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