11人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
新たなリポーターが実況を始めた。が、俺はそこで愕然としてしまった。
テレビ画面の中、連行されて行く男の顔に見覚えがあったからだ。
忘れもしない。深夜、あの女性を説得していたメロンちゃんが、窓の外を指差していた時、通りかかった通行人の男性……間違いない、あの男だ。俺が頭を下げたあの男、
何で……
こんな偶然があるのかと、自問自答しそうになった時、俺はふと、あの言葉を思い出した。
確かメロンちゃんは俺にこう言った。
「帰りは歩きですか?」、「電車じゃないんだ」と、
俺は怖くなりいてもたってもいられなくなった。
何なんだ。一体何が起こった?あの夜何があったんだ!?
必死に考えたがうまく頭が回らない。
会うしかない、メロンちゃんに。もう一度あって本人に確かめるしかない。
俺はそう思い。夜を待った。
いつもと同じように出勤し、メロンちゃんが入店する時間まで待った。
やがて、時計の針が二本とも真上を指したとき、店のドアベルが鳴った。
腰まであるゆるふわな髪の毛をかき上げながら、メロンちゃんが入店してきた。
ヘッドフォンを耳から外し、いつもの場所、いつもの席に着く。
「いらっしゃいませ……」
と、俺は言ってから、オーダー機は持って行かず、あらかじめ用意したメロンソーダを持って、メロンちゃんの席に向った。
「メロンソー、」
メロンちゃんが俺に注文するが、俺は彼女が言い終わる前に、メロンソーダをテーブルに置いた。
「昨日のお礼だ。で、あんたに聞きたい事がある」
ぶっきらぼうな物言いは百も承知だ。だが、何となくだが、俺はメロンちゃんにどこか恐怖を感じていた。
それが分かるまでは警戒を解くわけにはいかない。
「聞きたい事……ああ、ニュース、見たんですね」
無表情のままメロンちゃんがボソリと答える。
何でこの子はいつもこうダウナーなんだ。
「ニュース?じゃあアンタやっぱり何か知ってるんだな?」
俺は苛々しながらもメロンちゃんに聞いた。
「ええ、まあ」
「あんた昨日言ったよな?帰りは歩きか?って、俺がバイクだって答えたら、電車じゃないんだって、そしたらどうだ、俺の丁度帰宅時間に、○手駅で通り魔事件が起こった。しかも事件を起こしたのは、あんたが昨日の深夜、指をさした、窓の外にいた男だ!」
「あれは、あなたがそうしろって言ったから……」
「俺が?一体何言ってるんだ?」
最初のコメントを投稿しよう!