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「私聞きましたよね?この子だけでも開放してもらえますかって。あなたにも見えたでしょ?少しだけだったみたいだけど、白いワンピースの女……」
「白いワンピース……そんな!?いや、あれは幻覚でそのっ」
俺は言葉に詰まった。なぜ、なぜあの時の事をメロンちゃんは知っている?
確かに驚きはした。だが何を見たかは、まだ誰にも話していない。
「正直驚きました。私以外にも見える人がいるんだって。とにかく、あの白いワンピースの女性はどうしようもなかったんです」
「どうしようもって……何がだよ?何なんだよ!?」
俺は思わず怒鳴り散らしていた。
「だって、あの白いワンピースの女性、皆殺しにするって言ってたんですもの。私の横にいた女性を使って、私とあなた、厨房にいる人も、そして朝になったら、この店の前を通る、幸せそうな顔をした人も皆……」
「み、皆殺しって、そんな……」
「あの赤いワンピースの女性が、店に連れて来ちゃったみたいですね。この店、留まりやすい場所みたいだから。霊道って言うのかな?」
留まりやすい?霊道?さっきから何を言ってるんだこの子は??
いや、それよりも、
「ま、待ってくれ、じゃああの時、この子は諦めてもいい、でもそれ以上はだめだって言った後、外の男を指差したのは……!?」
麻痺していく心に、悪夢のような恐怖が膨れ上がってゆく。
「はい、赤いワンピースの女性の代わりに、あの人に憑くようにと、」
そこまで聞いて、俺は突如いう事を聞かなくなった足腰を支えられず、床に座り込んだ。
耳元に、ストローを鳴らす音が聞こえた。
「私とあなた、共犯ですから。罪は、一人より、二人のほうが軽いと思うんですよ。チュ?」
そう言って相変わらずの無表情な顔で、メロンちゃんはメロンソーダを口に含んだ。
炭酸の泡が、シュワシュワと音を立て、俺の目の前でパチパチと弾けながら、消えて行った。
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