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いつしか壁や床のあちこちに、見覚えのない切れ目やらボタンが設置される毎日。
男が寝ぼけて柱にもたれかかったその時だった。
カチッという不穏な音とともに、壁から何かが滑り出してきた。
画板を首から下げた、若い小柄な女性。
「小学生!?」
殆どスケッチ大会の様相。
「こんにちは。賑やかなおうちですね。ドラマCDになるといいのに」
何事もなかったかのように挨拶するゆきまる。
いきなり別の場所に出たのに、至極落ち着いて絵筆を走らせている。
大した集中力といえる。
「ゆきまるさんか。もう何があっても不思議じゃないんだけどさ。毎日退屈だけはせずに済むよ。どれ、今日は何を描いて……」
男がゆきまるに近づこうとした時だった。
床が怪しく沈んだ。
「ええっ!?ああ~~っ」
落下。
一方、ゆきまるのいた床はキリキリと鎖で天井へと巻き上げられていった。
人の気配はあちこちにあるにも関わらず、部屋の中には誰もいなくなった。
【完】
※ゆきまるさんから挿し絵をいただきました!
もうにまにまが止まりません!↓
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