【108の顔を持つ和貴 螺斑】

2/2
前へ
/82ページ
次へ
「いやー、ひどい目に遭った。尻が横に割れたかと思った」 変な仕掛けのせいで盛大に尻餅をついたが、それで済んだのは幸いだったといえる。 「さ、気を取り直してバリバリ仕事するぞ!」 男はわざとらしく大声を張り上げた。 そこら中の空気が震えた気がしたが、気のせいだろう。 ごす。 足元でおかしな音がした。 男は、慌てて飛び退く。 「危ない危ない、今度は何だ」 言い終わらないうちに、畳が跳ね上がった。 のみならず、畳に大穴が空いている。 「アホなおっさん執事、和貴 螺斑と申します。ご用があれば何でもお申し付けを」 完璧な執事の衣装に身を包んだ和貴 螺斑がそこに立っていた。 夢だ、これはさすがに夢に違いないと男は思う。 「何でも申し付けていい?」 「ええ。わたくしは108の資格を持っております。それをもってすれば不可能はございません」 「108の煩悩じゃなく?そしたらその畳直しといてくれる?また落ちるのはごめんだから」 和貴 螺斑は、持っていた鞄の中から素早く道具を引っ張り出した。 どうやって収納されていたのかは謎である。 きゅっきゅと小気味良い音を立てて、和貴 螺斑は畳を修復していった。 男はその技に感嘆しながら、始めから普通に登場してくれたら良かったのに、とはいわないことにした。 【完】
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加