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「今日もハゲ散らかしてますかー!」
風呂で一息つこうと脱衣所にやってきた途端にこのラリアット。
「家にはもう安全地帯などないのか」
ロープに逃れようとしたが、常駐する誰かが持って行ってしまったらしい。
「逃げや守りや隠れたハゲはいけません。姑息な手段は許しません」
「理貴さんや、俺は精一杯攻めてるよ。遺伝子が呼んでるからな」
「このまま白髪になっちまえば目立たなくて済むと思ってるでしょう。漆黒に染めて下さい、うちのじいさんのように」
「理貴さんのおうちの方々の雄々しさは尊敬するよ」
誰か、誰か助けてくれ~い。
男の心の叫びは無視された。
「ところで理貴さん、今日は何のご用で?」
白々しく話題を変える。
「そうだった。腹筋を鍛えに来たんですよ」
「……」
男は脱力する一方であった。
【完】
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