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「あれ?ここに柱あったっけ。あっちにもこっちにも。タンスとダンボール箱もこんなにあったっけ。まあいいや」
男は自分の持ち物には無頓着だ。
「師匠、また財布置き去りにして。いくら中身が入ってなくても用心しなきゃ」
押し入れから現れたのはみずのん。
恋愛小説の追っかけが趣味らしい。
恋愛に縁のない男の家にやってくるのは不思議なことではある。
「師匠いうな。でもありがとうみずのんさん。随分長いこと見つからなかったんだよ」
押し入れがどこに繋がっているのかは詮索しない。
「師匠!もう一歩!」
「師匠いうな。一歩って何がふぉうっ」
突然視界がぐるんと回転した。
ロープっぽい何かに足をすくわれたらしい。
下の方でみずのんが盛大に拍手している。
「これっていわゆる逆さ吊り?いや、困ったなあ、誰か下ろしてくれよ」
困り方が足りないとみえて、下ろしてくれる者はいなかった。
【完】
流星さん画。裾がどうなっていることやら。↓
![image=499213692.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/499213692.jpg?width=800&format=jpg)
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