【押し入れワンダーランドのみずのん】

2/2
80人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
「あれ?ここに柱あったっけ。あっちにもこっちにも。タンスとダンボール箱もこんなにあったっけ。まあいいや」 男は自分の持ち物には無頓着だ。 「師匠、また財布置き去りにして。いくら中身が入ってなくても用心しなきゃ」 押し入れから現れたのはみずのん。 恋愛小説の追っかけが趣味らしい。 恋愛に縁のない男の家にやってくるのは不思議なことではある。 「師匠いうな。でもありがとうみずのんさん。随分長いこと見つからなかったんだよ」 押し入れがどこに繋がっているのかは詮索しない。 「師匠!もう一歩!」 「師匠いうな。一歩って何がふぉうっ」 突然視界がぐるんと回転した。 ロープっぽい何かに足をすくわれたらしい。 下の方でみずのんが盛大に拍手している。 「これっていわゆる逆さ吊り?いや、困ったなあ、誰か下ろしてくれよ」 困り方が足りないとみえて、下ろしてくれる者はいなかった。 【完】 流星さん画。裾がどうなっていることやら。↓ image=499213692.jpg
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!