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「うーん、また増えた気がする」
気にしていては生活できない。
しかし横になれるのはもはや寝台くらいだ。
ちょっとうたた寝でもしようものなら、柱に頭をしこたまぶつけるのである。
「こんにちは」
台所の床下収納庫の扉がぽよんと開いた。
「まさかノーマークのそこから……。佐和さん、いつからいました?」
「このノンフィクションをはじめから記録しています」
年代物のガラケーをしっかりと構えている。
「いや、できれば夢であってほしいと思ってるよ」
佐和は女神様のような微笑みを湛えたまま、厳かにするすると床下へと帰って行った。
「我が家にはもう天井も壁も床もないも同然。あとはどこだよ」
柱やタンスたちがひょこひょこと揺れたような気がした。
多分気のせいではない。
【完】
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