【平成生まれの還暦浅葱 桜霞】

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静かな場所に建っている家だが、先程からどうも賑やかだ。 音は庭から聞こえてくる。 「ウィ~ンって何だよ、朝から結構な騒音だぞ……」 男は、最近ではその破られ易さから紙と呼ばれている窓を開けた。 「む、1.7m級巨人」 ここを訪れる客は、潜む為か比較的コンパクト。 その中では大柄な方だろう。 まだごく若く、少年めいた姿で浅葱 桜霞だとすぐわかる。 音の原因は草刈り機。 ぼうぼうだった庭は、すっかりさっぱりしている。 「おはよう浅葱さん。庭の手入れはありがたいけど、これって……」 「眺望満点、侵入し放題です」 (部屋の中にばかり気を取られていたら外から崩されてたー) この様子だと、抜け穴や落とし穴もきっとある。 「浅葱さん、どうかその辺で……」 「遠慮は要りません、庭は任せて下さい」 浅葱 桜霞は、美声を惜しみなく轟かせながら、庭を丸坊主にしていく。 次々と繰り出される戦後の懐かしのメロディー。 (絶対に年齢詐称だよ) 明日からは庭を歩くのも命懸けだ。 【完】
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