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「お外恐い。かと言って……」
怪しげな場所は、筆の尻でちょんちょんとつついてみる有り様。
「家の中も安全じゃないってどういうことだ」
「まったくですね」
まさか答えが返ってくるとは思わず、男は飛び上がって声の出所を探す。
「机……?あっ」
あまりにも机と一体化していて気づかなかったが、そこにいるのは近所のおさなづま、櫻井歩だった。
「何してる?櫻井さん」
「(_≧Д≦)ノ彡☆ばんばんってするのにココ便利ですもん」
「そんな理由!?いや、何があっても驚かないことにしたんだった」
「師匠がびっくりしてくれた方が楽しみが増しますね」
ワクワクしたその様子を見ると、何だかそれもいいかと思えてしまうのが恐ろしい。
「師匠いうな。そういや結婚記念日っていってなかった?旦那さんとパトちゃんが待ってるんじゃないかな?おめでとう!」
櫻井歩は嬉しそうに頬を染めた。
何かのボタンを押すと、椅子ごと発進した。
本棚がくるりと裏返り、そのまま庭へ。
「ええええ?何でそんな仕掛けがっ……いやヤバい、その庭はヤバいんだよう」
櫻井歩は優雅に手を振った。
庭には、いつの間にか無駄に短い動く歩道が設置されていた。
誰が、何の為に。
そんな疑問も無意味なのかもしれない。
【完】
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