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「師匠~、おっぱよ☀」
遠慮なく仕事場のカーテンが力一杯開けられた。
と言うことは、カーテンだけでなく、玄関も台所も突破されたということだ。
「師匠いうな。眩しいな、遊んでんじゃないんだぞ。ほぼ徹夜で仕事してんだよ」
「師匠~、ほらこれ見ぃ。ついに弟子はすまっほデビューだ!」
「相変わらず人の話を聞いとらんな」
弟子を名乗るてるてるリンが、男の鼻先に文明の利器をグイグイと押しつけた。
「近い近い近い、見えねぇから。それは邪悪な代物だ。俺は一生ガラケー村の村民なんだ」
「師匠ぉ、ガラケー村に戻る方法知らない?」
「使いこなせてないじゃないか。しかしガラケー村は多分一度出たら二年は戻れんだろう。その間に製造中止とか……」
「師匠~!これ何?」
「リンよ、話を聞け。師匠いうな!……それはアレだ、食って良いぞ」
流星が置いて行った暗黒かユウの椀である。
「毒みたいな凄ぇ色してる」
「一応秘伝の薬らしいぞ、俺は二度とゴメン……」
「んぐんぐんぐ」
「食うんかい!」
何だか元気になったてるてるリンは、視認できない速さで部屋を出て行った。
今日もまた、信じられない程の勢いで世界を飛び回るのだろう。
男は、くたくたともう一度布団へ潜り込んだ。
【完】
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