第1章

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 四季が人差し指を僕に突きつけて言う。僕は首をかしげる。 「まぁ、いいです。本当に木目沢さんにはもったいない人ですから気を付けてくださいね」 「分かったよ」 「……。信じましたから」  言って、四季は文庫本を開いた。僕も少し疲れたのでベットに横になって目をつぶった。すぐに眠気が襲ってきて僕は眠ってしまった。 * * * 目を覚ますとベットの横に小さな椅子が置かれていて、立花さんが座って本を読んでいた。 「あ、起きた?」 「おはようございます」  僕が頭を下げると、立花さんは顎に人差し指を当てて考えこむ。 「んー。私としてはその敬語と立花さんっていうのやめてほしいだけどな」  名字で呼ばず名前で呼んでくれと言うことなのだろう。名前で呼ぶのはさすがに緊張する。 「敬語は止めるから名前で呼ぶのはもうちょっと後でもいい?」 「いいよ。許してあげる」  立花さんが両肘をベットにおいて手の上に顎を乗せた姿勢で言ってくる。うお。可愛い。思わず顔が赤くなりそうで視線をそらす。 「記憶を失う前の僕は……立花さんの事をなんて呼んでいたんだ?」  照れ隠しをするために話題をそらしてリンゴを口の中に放り込む。 「聞きたい?」 「気にはなるよ」 「あすあす」  僕は思わず吐き出していた。 「僕が立花さんのことを……その。あすあすって呼んでたっていうの嘘でしょ?」  立花さんはにこにことした表情を崩さず。僕の顔を見つめている。嘘だろ。僕は本当にそんな恥ずかしい呼び方をしていたっていうのか? 「もちろん嘘だよ」  僕は大きくため息を吐いた。安心半分呆れ半分だ。 「なんかあんまり面白い反応するから」  立花さんはまったく悪びれた様子がない。けらけらと笑う。 「勘弁してくれ」 「本当は今と一緒。立花さん。何度名前で呼んでくれって言っても呼んでくれなかったよ」  僕らしいと言えば僕らしいのかもしれない。 「ああ、そうだ。着替えとか一応入院に必要そうなものを要の部屋から持ってきておいたから」  僕のベットの上には大きめのバックが置かれていた。その時、病院が夜の八時を告げる放送を流した。面会終了時間のようだ。 「じゃあ、また明日」 「また明日」  病室から立花さん出ていくのを見送ったすぐ後、病室の扉が乱暴に開かれた。 「おお! 要ぇええええ!」
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