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困惑し、黙りこむ小池。全く理解不能だ。自分は、こんな女は見たことがないのだ。
それ以前に小池は、風俗以外の場所で女と触れ合ったことがない。しかし、こんな女はいなかったはずだし、そもそも風俗の女が小池のような男を探すわけがない。
何か狙いでもあるのだろうか……そう思いながらも、小池は仕方なく頷いた。
「チッ、わかったよ……付き合えばいいんだな」
だが小池は、その選択をすぐに後悔していた。
「ねえ、おじさん! あれ見てよ!」
「おじさん! あれはなんていうの!?」
バスの中で、ミネコは窓から外を見ながら、子供のようにはしゃいでいた……そして、小池にあれやこれやの質問をする。
小池は仕方なく、一つ一つ答える。だが、内心では呆れ果てていた。このミネコという女は、頭が悪すぎる上に物を知らなさすぎる……ひょっとしたら、精神病院から脱走して来たのだろうか。だとしたら、早いうちにずらかるとしよう。この女、見た目と違い腕っぷしは強い。下手なことを言って機嫌を損ねたら……何をされるかわからないのだ。
だが次の瞬間、小池は驚愕の表情を浮かべた。
「そういえば……おじさんさ、よく公園を歩いてたよね」
公園……確かに逮捕される前、小池は公園の近くに住んでいた。四畳半のボロアパートで、家賃は四万円だ。当時の小池は、自販機を荒らしたり空き巣をしたりして生計を立てていた。だがドジを踏み、警察に踏み込まれてしまったのである……。
「真幌公園のことか?」
思わず、小池の口をついて出た言葉……すると、ミネコは首を傾げた。
「名前は知らない。でも大きい池があったよ。魚や亀が泳いでた。おじさん、いつも公園を歩いてたよね」
楽しそうに答えるミネコ……小池は必死で記憶を探った。この女の言っていることに間違いはない。自分はほぼ毎日、真幌公園を歩いていたのだ。となると、公園で自分と会っていたのか。
だが、いくら記憶を掘り返しても、ミネコの姿には見覚えがない……。
「そうだ! おじさん、一緒にあの公園に行こ!」
不意に、そんなことを言い出すミネコ。小池は顔をしかめた。
「あのなあ……真幌公園は遠いぞ。ここから六~七時間くらいかかる――」
「ろくしちじかん? それって、どのくらい?」
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