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首を傾げるミネコ。さすがの小池も頭を抱える。まさか、刑務所を出た直後にこんな女に付きまとわれるとは……自分は、よほどツイていないらしい。
だが仕方ない。ミネコの腕力は尋常ではない上、頭がいかれている。言う通りにしないと、何をしでかすかわからない。
しかも……この女は昔、自分の人生に関わっていたらしい。どういった形かは知らないが、それを探りたいという気持ちもある。
「六時間は長いよ……だが仕方ない。大人しくしてるなら連れて行ってやる」
「うん、わかった。大人しくしてる」
確かに、その道中ミネコは静かにしていた。だが、そのリアクションは激しかったのだ。窓に顔をくっつけ、じっと外を見ている。時おり、笑顔でこちらを向いては外を指差す……小池が無視すると、怒ったようにつついてくる。
小池は付き合いきれないものを感じながらも、仕方なく相手をしていた。しかし、彼の疑問はどんどん膨れ上がっていく。
この女は、いったい誰なんだ?
「ここだぞ。ここが真幌公園だ」
午後三時過ぎ、ようやく真幌公園に到着した二人。
目の前には、数年前と変わらない風景が広がっている……公園の中心には巨大な池があり、その周囲には大木が何本も植えられていた。子供たちの遊ぶ遊具なども設置されており、幼い子供たちが遊んでいるのが見える。
小池は、複雑な感情が湧き上がってくるのを感じていた。懐かしい風景ではある。自分は、この辺りに十年近く住んでいたのだ。
だが逮捕されたのもまた、この周辺である……。
だが、そんな小池の想いとは別に――
「うわ! 懐かしい! ぜんぜん変わってない!」
ミネコは興奮した表情で、あちこちを見ていた……かと思うと池に近づき、水面を食い入るように眺めている。
「お、おい……落ちるなよ……」
言いながら、小池は近づいて行く。
ミネコは楽しそうに、池を眺めている。大きな瞳を輝かせ、無邪気な表情で水面を見ている……そんな姿を見ているうちに、小池の顔からも笑みがこぼれた。
その時、ミネコが叫ぶ。
「おじさん! あれ見てよ! 鳥だよ鳥! 鳥が泳いでる!」
彼女の指差す方に、小池は視線を移した。すると、鴨が池を泳いでいるのだ。くわっくわっ鳴きながら、水面をすいすいと泳いでいる。
「あれは鴨だろうが……」
苦笑しながら、小池は言葉を返す。だが、その時にある疑問が浮かんだ。
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