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「あ~あ、記憶が戻ったんだ?今回はあの女のことも忘れさせて、うまく私に依存させられたと思ったんだけどな~、残念。もう一回だね?」
彼女はてへっ、という声が聞こえてきそうな態度でしょんぼりすると、鞄からスタンガンを取り出した。
「大丈夫、痛くないよ?もうだいぶ慣れたから」
暗転。
◇◆◇
目を開けると、そこには何やら取り乱した様子の女性がいた。
「大丈夫!?私のこと、わかる!?」
「…?ごめん、誰かな?」
どうやらかなり心配をかけたみたいだが、この女性に全く心当たりがない。正直にそう答えると、女性は小さく息をのんだ。
「…そう、覚えてないんだ…。わたし、一条 凛子。宜しくね!」
そうか、俺は記憶喪失というやつらしい。そして一条 凛子と名乗った女性はきっと俺の大切な人だったに違いない。ショックを受けさせてしまったことに後悔を覚える。
なんだ?手が震えている…。まるで何かに怯えてるみたいだ。
いや、どうせ記憶喪失の反動か何かだろう。そんなことを思いながら凛子を見ると、こちらに気づいて柔らかい笑顔を向けてくれた。
あぁ、本当に綺麗だ。この子と恋仲にあった記憶喪失前の俺はきっと、幸せだったことだろう…
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