第一章 幸福な王子

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第一章 幸福な王子

 オスカー・ワイルド著作『幸福な王子』の書評である。この本は短編集の題名にもなっている『幸福な王子』続いて『ナイチンゲールとばらの花』『わがままな大男』『忠実な友達』『すばらしいロケット』『若い王』『王女の誕生日』『漁師とその魂』『星の子』合計九の短編を集めた短編集だ。翻訳は西村孝次という人がしている。  僕は『幸福な王子』が好きで読むだけではなく、この本をパソコンではあるがテキストに打ち直した。絵でいうところのトレースである。それほどまでにこの本『幸福な王子』が好きだ。自分がどうしてここまで好きなのかを含め、この本を分析しようと思い筆を持った。筆を持つといっても文字を打つという表現が近い。  物語を語る上で、物語の全容を書いてしまう事があるので、全容を知らずに物語を楽しみたい人は、まずは『幸福な王子』を読み終えてから読んだ方がいい。  『幸福な王子』のカテゴライズ、分類分けで童話に入っているが、大人も楽しめるようになっている。生きていれば触れられる、もしくは考えられる人間の醜さが随所に見られる。子供がこの醜さを醜いと認識するには、もう少し大人にならなければならないと思う。子供に醜いものとは何かを教える童話と考えれば、子供の情操教育としては素晴らしいものかもしれない。が、醜さの概念を人工的に与えるというのは、洗脳に近いのではないかと思うが、秩序が保たれるのであればいい手段と割り切るのもいいだろう。僕自身の洗脳と教育についての考え方は、これ以上は書かないでおきたいと思う。生々しい醜さを娯楽として楽しめるのは、やはり大人だと思う。子供はこれを非現実的と思わないからだ。  それで子供は楽しめないかと言うと決してそういう事にはならないと思う。童話のイメージは美しいものの集大成。絵空事、綺麗事。そんなイメージが日本にいるとあるが、その要素は入っている。装飾された言葉に、幻想的な雰囲気、非現実の動物が言葉を喋る。子供はこれを楽しめるだろう。  この『幸福な王子』は醜さと美しさの短編集である。黒と白の物語で、灰色という中間色がない二元論型の構成をしている。善悪、奉仕搾取、勤勉怠惰。そういう物語ばかりである。片一方で終わらせる気のなさが必ず伺える。が、しかし、この後、章ごとに各短編の書評をしていくが、ひょっとするとか『必ず伺える』の必ずの部分がない事が判明するかもしれない。
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