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友哉の元に同窓会の案内ハガキが届いたのは、3週間ほど前だった。
今年で廃校になる小学校に、9年ぶりに集まらないかという趣旨の誘いだ。
幹事は同期のクラスメート全員に案内を送っているらしく、“校庭でバーベキューしよう!”と、ノリノリの文面だった。
「物好きな奴らだな」と、すぐさまハガキをゴミ箱に捨てたが、運悪く母親に見つかってしまった。
「ちょうどいいじゃない、行ってきなさいよ友哉。せっかくじいちゃん達もあそこに戻ってきたんだし。この夏、母さん達は仕事で行ってあげられないしさあ。友哉が行ってあげたらきっと喜ぶよ二人とも。ね!」
もともと関東出身で方言もすっかり抜けた母が、自分の名案に嬉々として言った。
それは実際同窓会うんぬんよりも、親の思惑だったわけだが。
友哉にも仲が良い友だちがいないわけではなかった。
5年生まではごく普通のやんちゃな少年だった。
夏休みともなれば友だち数人と連れ立って、近くの遊泳所に指定された川で真っ黒になるまで泳ぎ、山奥に作った秘密基地では、誰かが家から持ってきた成人向け週刊誌や漫画をドキドキしながら覗く、ごく普通の少年期を過ごした。
そう。6年生の春に、あの双子の姉弟が転校して来るまでは。
友哉は布団に転がりながら、磨りガラスと障子を抜けてくる月明かりをボンヤリ見ていた。
体はぐったり疲れているのに、頭が冴えて眠れない。
もう最後にしよう。もう一度ここに来て思い出と決別しようと思った。
結局この地を遠く離れても、忘れることは出来なかった。
もう一度あの場所に行って、花でも供えて、そしてすべて終わらせるんだ。今度こそ……。
友哉は目を閉じた。
どこかでチリンと風鈴の音が聞こえた気がした。
◇
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