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6年生の春。
友哉のクラスに、8月いっぱいまでということで転入してきたのは双子の姉弟だった。
1学年1クラス。それも男女会わせて21人しかいないクラスにとっては、センセーショナルな出来事だった。たった一学期間とはいえ。
そして、その双子の姉、保奈美は息を呑むほど美しい少女だった。
「東川保奈美さんと、弟の由宇君です。ご両親の都合で2学期が始まるまでの滞在となるそうです。短い間ですが、皆さん仲良くしてあげてください」
担任の女教師がそう説明する間も、クラス全員が姉の保奈美に釘付けになっていた。
女子までもが、だ。
背丈は女子にしてはかなり高く、スラリと伸びた手足はとても白くしなやかで、バービー人形を思わせた。
癖の少しもないストレートの長い黒髪は、薄いブラウス越しにふっくら膨らんだ胸に、軽くかかっている。
小顔のせいかひときわ大きく見える黒い瞳は、凛として少しも臆すること無く、新しいクラスメート達をまっすぐ見つめていた。
教室は水を打ったように静かになり、友哉は少しの間、息をするのも忘れた。
雑誌やTVで見るモデルやアイドルにも、これほどまでに心を震わされたことはなかった。
しなやかな細い体から放たれるのは、今まで机を並べてきた女子たちとは明らかに別のものだった。
女子ではない。そこに居るのは、異性だった。
しっかりと落ち着いた声で保奈美が自己紹介を終えても、しばらく誰ひとり雑談するものはいなかった。
教室中のだれもが、言葉を失っていた。
そしてたぶんその時、誰も、もう一人の少年のことは見てなかったはずだ。
姉の影に恥ずかしそうに隠れ、緊張で小さく震えていた華奢な少年の事を。
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