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「明日同窓会なんやろ? あの小学校の校庭借りてするっちゅうたなあ。早う寝んとエライが」
夕食が終わってしばらくした頃、スイカが乗った皿をテーブルに置きながら、カナエが言った。
懐かしい甘い果実の匂いが、再び友哉の記憶の底を揺する。
「うん。でも夕方からだから大丈夫。先に寝ててよ、二人とも」
「そうかあ? 友哉も早う寝えや。……じゃけど寂しゅうなるねぇ。あの小学校も今年いっぱいで廃校になるっちゅうし。昔はもう少し子供もおったのに、今は若い人は皆よそに行きよる」
この村は年寄りばかりになる、とカナエはウンザリしたようにため息をついた。
自分は年寄りの中には入っていないような口振りだ。
友哉は笑ってカナエに言った。
「仕方ないよ。そういうもんだから」
---消えてなくなればいい。
唐突にそんな思いが胸を突き上げてよぎり、友哉はドキリとした。
---あんな学校も、級友も、記憶も。 みんな消えて無くなればいいんだ。
それは9年前の自分の叫びだ。
今ではない。
きっとそうだ。
自分の中で眠らせていた嫌悪や悔恨を直視することが震えるほど恐ろしく、友哉は苦しげに息を吐き出した。
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