第1章

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窓の向こうからは、舗装されていない道路をオンボロの自動車が走る音、記憶に残ることの無い井戸端会議。様々な雑音は、僕を深い眠りに落ちるのを妨げようと窓を通り過ぎてやってくる。 これにもまたイライラを募らせていたが最近はイライラもあまり募っていないように思える。 人間は順応するのだ。 今日もまた眠りの妨害をされた。足元に蹴り寄せられた毛布を引っ張り出し身を包み、脱ぎ捨てたパーカーを探す。ベッドから少し離れたところに、無残に脱ぎ捨てられたパーカーを見つけ、冷たいフローリングの上をせかせかと走り身につけた。ベッド近くに置いておけばいいのにと、いつも思う。でも慣れた。 冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注いでいる間に食パンを焼く。きつね色に焼きあがったパンをそのまま食べる。口の中がパン粉でいっぱいになる頃合いを計って牛乳を流し込む。窓の向こうには最後の一枚を付けた木が見える。あの一枚の葉っぱがいつ踏ん張り切れずに落ちてしまうのかを考えるのが楽しみだ。明日は雨だ。最後の1日を楽しめよ、と葉っぱに激励を送る。
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