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『――目覚めよ』
暗闇の世界の奥から、声がした。
聞き覚えのない、威厳を多分に含んだ声。
『――目覚めよ』
同じ声、同じ抑揚で、同じセリフが繰り返される。
――もう少し、この暗闇の世界に身を投じていたいのに。
わずらわしさを感じつつも、同じセリフのリピートを延々と繰り返されたくない僕は、渋々目を開き、暗闇の世界から光溢れる世界へと足を踏み入れた。
真っ先に目についたのは、前にある玉座にどっかりと座って王冠をかぶり、赤いマントを身にまとう、見るからに偉そうな人。
状況が分からない僕は、辺りを見回す。
すると、周りにいる武器を持った人達が低い歓声をあげる。
「……成功したようだな」
成功?何の話?
訝しがる僕をよそ目に、目の前の人は話を続ける。
「呼び起こしてしまって、すまないね。どうしても君の力が必要――」
「あの……」
無礼かな、とは思った。でも何より聞かなきゃいけないことがある。
なので僕は、混乱してる頭を整理するように、目の前の人に尋ねた。
「あなたは……僕のことを知ってるんですか?教えてください、僕は誰ですか?ここは、どこなんですか?」
全然記憶がない。
名前とか、今まで何をしていたのかも。
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