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「……すまない。聞き違いかな?君は今、何と言った?」
「いやって言いました」
『…………』
再度訪れる沈黙。その殻を破り、僕は理由を述べた。
「だって、魔王と戦うってことは怪我するかもしれないじゃないですか。痛いのはイヤなんですよ、僕。平穏無事、無病息災の人生を送りたいんです。なのにその真逆な、波乱万丈な冒険の旅になんか出たくないですよ」
周りの衛士たちが、呆然と口を開けて僕を見る。信じられないと言わんばかりに。
一方王様は、肩をワナワナと震わせ、
「えーい、さっさと行かんかぁ!!」
「わぁっ!?」
後ろの開いた扉に向かって、王様が指差すと同時に僕は宙に浮き、その扉へとまっすぐ飛んでいった。
「へぶっ!!」
扉の先にある、冷たい地面に着地すると同時に、扉が閉められた。
「……何なの、一体」
『散々だったね。大丈夫、マイケット?』
耳の近くで声がした。見るとそこには、白い羽衣をまとった長い緑髪の女の子がいた。
ただ、その女の子はとても小さい。だいたい手の平サイズだ。
「き、君は……?」
『あー、そっか。記憶を失ったんだったね。外から聞いてたよ、うん』
女の子はそう言うと、胸を張って誇らしげに言った。
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