探偵と少女

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乱立する雑居ビルの中に古い事務所があり、看板には大きく[染谷探偵事務所]と書かれている その中にはタバコを吸う、ボサボサ頭の不真面目そうな男がいた 男の名は染谷 士郎(そめやしろう) 27歳 この探偵事務所の所長だ 今のところ所員は彼一人 以前は二人居たが彼のだらしない性格に嫌気がさし 一ヶ月前に辞めてしまった ―来るもの拒まず、去るもの追わず― 彼にとって人が寄るのも去るのも「神のみぞ知る」だ 「ふああ、暇だな」 あくびをしながら、タバコを取り出し火をつける 机の上の灰皿は幾多の吸殻が積まれ大きな山の形に成ってあり、今にも崩れそうだ 「今日はもう事務所閉めるか・・・」 士郎が席を立とうとするとピンポーンと軽快なドアホンの音が鳴った 「客か。仕方ねえな」 タバコの火を灰皿の端で消し、立ち上がる 彼は頭を掻きながら面倒そうにドアへと向かった
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