29人が本棚に入れています
本棚に追加
遠くから話し声が聞こえる。
きっとふたりも戻ってきたんだ。
「麗ー!帰ったぞー」
星苑がそう言いながら病室に入ってくる。
「お父さんみたいなこと言わない」
そして、そのあとをツッコミながらついてくる紫葵。
「えー、じゃあなんて言うんだよ?」
星苑がそういうとそばまできた紫葵が私に近づき、
「…ただいま」
といって頭を撫でた。
「ぉ、おかえり…」
「なんだ、対して変わらないじゃん」
紫葵のその行動に戸惑った麗の答えを聞いた後、星苑がツッコミ返した。
「…うっせー!」
そういって笑うふたり。
そこには確かな友情があった。
幼なじみというものに違和感は感じない。
でも、私との間ではどうかな…?
「…なーに怖い顔してるんだよ」
「…へ?」
「しわ寄せて鬼みたいだったぞ。」
「なっ、そんな顔してないもん!」
「してたしてた。こーんな顔!」
「してませんー!…ふ、変な顔」
変顔を見て笑う私を優しい顔で見つめ、「そっちのほうがいいよ」といって微笑む星苑。
だけど紫葵くんはどこか悲しそうな顔をして微笑んでいた。
「…考え事でもしてたのか?」
紫葵の問いかけにドキリとした。
「うん…、そうなの。」
「考え事ー?」
不思議そうに星苑が聞くので、麗は思い切って聞いてみることにした。
「うん。私達って幼なじみなんだよね?」
「ああ、そうだよ?」
当然だとでも言うかのように答える星苑。
「いつから?」
「そんなんわかんねーよ。生まれて物心ついたときから一緒だから。」
「そっか…」
麗のその様子に、一瞬悲しそうな顔をしたが、笑顔で星苑が語り始めた。
「…毎日のように遊んだんだよ、俺達。小学生の頃も、中学生の頃も、高校でだって一緒に登校して。クラスは違うこともあったし、下校なんかは部活で一緒になることはあんまりなかったけど、それでも家が隣だから毎日のように誰かの家行ってた。」
「そっか…。そんなに仲良かったんだ。」
「まぁ、忘れられちゃうのはちょっと寂しいけど、これからも一緒にいられるんだし、それに俺らが思い出のひとつひとつを思い出させてやるから、大丈夫だ」
星苑がそう言うと、紫葵も強いまなざしでこちらを見て、こういった。
「そうだ。これからも、ずっと一緒だ。」
最初のコメントを投稿しよう!