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「うん…、ありがとう。」
麗がそう言うと、星苑がニカッと笑ってこういった。
「おう!他になにか聞きたいこととかあるか?」
「あ、えっと…。私達、喧嘩とかしたことあるの?」
「そりゃあもう、たくさん!とくに俺と麗はよくしてたな。まぁ、小さいことが原因だから、すぐ仲直りしてたけど。」
「そうなんだ。…紫葵くんは?」
突然話を振られたからか少し驚いたように目を見開いたが、いつものように静かにこう言った。
「…俺らは、あんまりなかったかな。星苑と麗の喧嘩を仲介したり、ふたりの愚痴聞いて宥めたりはよくしてたけど。」
「そうそう、でも結局紫葵は麗の味方なんだよな」
「そんなことない。公平にみて、どっちが悪いかは判断してたぞ?」
「まぁそうだけど、でも麗には甘かったよ」
「そうか…?」
「そうだよ。…でも、高3の最後らへん、お前ら喧嘩してなかったか?いつもよりも口数少なかったし、お互いに避けてたし。」
「……!!」
星苑がそう言うと、明らかに戸惑う様子を見せた紫葵。
「え、そうなの…?」
「ああ。でも俺には何にも言ってこなかったから、なんでそうなってるのかもわかんなかったしな。結局、そのまま卒業した。その夜、麗が救急車に運ばれた」
「…え、卒業式の日の夜…?」
「そう、昼は各自クラスの打ち上げ行ったりしてバラバラだったけど、夜は麗の家で卒業パーティーする予定だったんだ。だから俺達、麗の家で待ってたんだけど…、電話かかってきて、病院に運ばれましたって」
コロコロと表情を変えながら話す星苑。
「そうだったんだ…。でも、どうして…?」
麗のそんな問いに、今度は紫葵が答えた。
「俺らの家の近くに、展望台があるんだ。そこに寄ってから帰ろうとしてたんだろうな、階段のそばで倒れていたところを、たまたまそこに来た人に見つけられて救急搬送されたんだ。」
「展望台…。」
「麗、なにかあるとあそこ行くからな。きっと、あの時なにかあったんだろうな…。考えたいこととかあったのかもしれない」
「……。」
星苑がそう言うと、紫葵は顔を背けて眉をひそめた。
するとその時、医師が病室に入ってきた。
廊下から話し声が聞こえるからのぞいてみたらしく、星苑と紫葵くんは「あまり無茶させないように」と注意されていた。
医師がいなくなった後、紫葵くんが「もうそろそろ帰ろうか」といい、またくるといい残して帰って行った。
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