第1章 消え去った記憶

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それからと言うもの、ママとパパは毎日のように顔を出してくれた。 星苑も時間をつくって来てくれる。 紫葵は、あれ以来たまに顔を出す程度でほとんど来てくれることはなかった。 「麗ー!!来たぞー!」 「星苑…。暇なの?」 「うわっ、ひどいなー。大切な幼なじみが暇してると思って来てやってるのに」 「…ありがと。でも、大学の課題とかあるんじゃないの?」 「そりゃあな。でも、バスケの推薦で入ってるから、やっぱりある程度は練習顔出したりしてるけど、大学は強制じゃなくていいっていうから。課題も、推薦は少なめだし。 だから大丈夫」 「ふぅーん。ならよかったけど…」  「麗はほんと素直じゃないよなー。」 「うるさいー!」 静かだった病室が笑い声に包まれ、一気に明るい雰囲気へと変わる。 こういう瞬間は、唯一不安や恐怖を忘れることができる。 きっと、星苑のおかげなのだろう。 「なぁ、ずっと中にいるのつまんなくね?たまには外行こうぜ」 そういって、星苑は私を車椅子に乗せて屋上に連れて行ってくれた。
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