第1章 消え去った記憶

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あの長い眠りから目を覚ました日から、青い空と白い雲が広がる空を窓越し以外に見ることがなかった麗は、じっと空を見つめていた。 「気持ちいいなー!!」 星苑がそういって両手を広げている。 「…ほんと、すごく気持ちいい」 麗も、吸い込まれそうなほど青い空を見つめながら、空気をゆっくり吸い込んだ。 「でも、ちょっと風が冷たいな。麗、寒くないか?」 「大丈夫。ありがと!」 「おう!寒かったら言えよ?」 そういって笑う星苑をみて、心が暖かくなった。 屋上から街を見下ろしていると、なんとも言えない懐かしさが広がっていく。 この空と街の風景を、きっと私はいつも見ていたんだろうなと実感する。 と、その時。 「………う゛っ!!」 「麗?!どうかしたか?」 「…頭が」 「頭が痛いのか?!」 頭を抱えてうずくまる麗の顔を、心配そうに覗き込む星苑。 頭の痛みの中に広がったのは、夕焼けから星が輝く夜空に変わっていく空の景色。 煌びやかに輝く街の夜景。 そして、風の香りと涙が頬に伝う感覚だった。 「…麗?大丈夫か?!」 「…もう、平気。」 「本当に…?」 「夕焼けと、夜空と、夜景が見えた」 「…え?」 「どこか高いところから、長い間その風景を見てたみたい。それが早送りみたいに見えたの…」 「思い出したのか…?」 「わからない…。でも、見えたの」 「…そっか。高いところ…、たぶん展望台だと思う。もしかしたら、あの日のことを思い出したのかもな」 「そうなのかな…」 「そうだといいな」 「うん…」
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