第1章 消え去った記憶

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まるで少しずつ波が引いて行くように、頭痛が消えていった。 とはいえ、体力が落ちて身体中に傷を負った麗にとっては今起きたことは耐えられるものではなく、とても疲れた様子だった。 「戻るか…?」 そんな麗の様子を見て星苑が言った。 「ううん、もう少しだけここにいたい」 「わかった」 そういって自分が羽織っていたパーカーを麗の肩にかける星苑。   ありがとう、といった麗は、そばにある星苑の服の裾を掴んだ。 「…どうした?」 「…なんでもない」 本当は、今自分におきたフラッシュバックのようなことが怖くて、そばにいてくれる星苑をもっとそばに感じていたくて少しだけ甘えた麗。  だが、その様子を懐かしそうに見た星苑は微笑んだ。 「…嘘ばっかり。」 「え?」 「麗がそうやってやるときは、いつも何でもなくなかったから」 そういってそっと裾を掴む手を優しく握った。 「…大丈夫だよ。俺はどこにも行かない。この前もそう言っただろ?だから、安心しろ」 「うん、ありがとう」 そう言って微笑み合う2人。 そんな2人の後ろ姿を入り口のそばから紫葵が見ていた。 そして、そっと扉を閉めて病院を後にした。
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