第1章 消え去った記憶

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しばらくしてから病室に戻ると、ママが心配そうに座っていた。 「麗、どこに行ってたの?」 ママがそう言って駆け寄ってきた。 「俺が屋上に連れて行ったんだよ。心配かけてごめん。」 「星苑くん、そうだったの。ありがとう、こうやっていつもそばにいてくれて。」 「いいや、たいしたことはしてないよ。それより、麗さっきちょっとだけ思い出したみたいなんだ。まだ断片的だけど、良い進歩だと思う。」 「…ほんと?よかった!」 「ただ、思い出すときに頭がすごく痛くなったみたいで…。辛そうだった。だから、もしまた思い出すことがあったら頭痛もあるかもしれないから、先生に相談したほうが良いかもしれない」 「あら、そうなの麗?」 そう言って麗に目を向けると、麗はすでに眠っていた。 「麗、寝ちゃってる。きっとすごく疲れたんだな。…わるいことしたかな?」 星苑が申しわけなさそうにそう言うと、ママは微笑んだ。 「いや、きっとひさしぶりに外にでて楽しかったんだと思う。でもちょっと疲れが溜まってるのね。」 「…ごめん」 「ううん、むしろ感謝してるの。記憶がちょっと戻ったのも、いつも星苑くんがそばにいて今日みたいに刺激をくれてるからだと思う。本当にありがとうね」 「いや、俺は本当になにもしてないよ。俺が麗に会いたいだけだし。」 「あら、嬉しい!きっと麗が聞いたら喜ぶよ」 そう言って、少し穏やかな表情で眠る麗をみて微笑んだ。 「…いつから手を握ってるの?」 「記憶を少し取り戻したときくらいからかな。移動中は放してたけど、ベッドに寝かせたらまた握ってきて」 「ふふ、本当に昔から変わらないわね。」
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