第1章 消え去った記憶

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「……!、…ぃ、……!!」 なんだろう、声が聞こえる。 小さくて一定の音とともに、遠くで声がする。 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ さっきまでなんの音もしていなかったのに、ごくわずかな音が遠くで聞こえる。 「…ぃ、……!……!!」 まただ。 どこか懐かしいような声がする。 どんどん暗闇が薄れ、グレーのもやもやに包まれていく。 「ぉぃ、…ぃ!!」 声とともに、明るくなる孤独な世界。 床にはいつくばっていたはずのこの世界での私の身体が、暗闇から離れていくうちにどんどん浮かんで明るい場所へと向かう。 怖い…。 これからどこに行くの…? 「…っ!!…ぃ!……麗!」 一番大きく感じた声に、私は目を開けた。 すると、今度は白い世界にいた。 ぼんやりとしか見えなかったその白い世界に、いろんな色が足されていく。 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、という一定の音とともに、さっきまで聞こえていた声が「…麗!目が覚めたのか?!先生、先生呼んでくるから待ってろ…!!」といってバタバタとした足音とともに居なくなった。 はっきりその光景が見えるようになった頃には、自分の体の重さや全身に感じる声をあげてしまいたくなるような鋭い痛み、白い天井、暖かいような冷たいような白い布団、少し動くと激痛が走り、なにかがきしむ音など、たくさんの情報がいっぺんに入ってきた。 …ここは、どこ? どうしてこんなに身体が重いの? どうして身体中痛いの? わからない…。
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