第1章 消え去った記憶

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そのあとの時間もとても長く感じた。 私のお母さんとお父さんだという人が駆けつけ、医師から説明を受けると、呆然としている様子がみえた。 母は、泣き崩れていた。 どこか懐かしいような雰囲気が漂うふたりの姿を見ても、私はなにも感じなかった。 なにも思い出せない。 身体の痛みに耐えながら、その後もいろんな精密検査を受けた。 身体に負担をかけないよう、あまり一度に多くの検査はしなかったが、これからも数日かけて検査していくらしい。 病室にもどり、しばらく両親と話したあと、ふたりは帰って行った。 やっとひとりになれる。 そう思った矢先、星苑が病室に入ってきた。 「…帰ったんじゃなかったの?」 「うん、一回帰った。ちょっと気持ちの整理つけたくてな」 「なんできたの?」 「会いたかったから」 「…なんで?」 「当たり前だろ?幼なじみが大怪我して大変な時、そばにいてやりたいって思うだろ」 「ひとりにして」 「…そんなこと、思ってないだろ?」 「思ってるよ。今は、そっとしておいてほしい。自分が誰なのかも、星苑が誰なのかも、親が本当に私の親なのかも私にはわからないの…!ただでさえなにもかもわからないのに、たくさんの人がきて、検査だの診察だの見舞いだのに来て、もう頭の中ごちゃごちゃ。お願いだからひとりにして!」 「落ち着けって」 そういって麗の肩に手を置く星苑。 「さわらないで!」 麗が声を荒げ、星苑の手を払おうとすると、その手を優しく掴み、こう言った。「いいから落ち着け!」 そして静かに、だけど力強く抱き寄せる星苑。 始めは抵抗していた麗も、その温もりと背中をポンポンとする優しい手に、落ち着きを取り戻していった。 「…俺は、本当のお前を知っている。そんな強がっても、心の奥では助けてほしいって思ってることだってわかってる。だから俺は、お前を離したりしない。…確かにショックは受けた。だけど、一番辛いのは麗だよな。なくなった記憶も、俺がちゃんと取り戻してやる。だから、安心しろ」
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