第1章 消え去った記憶

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その優しい声と言葉に、麗は涙した。 ひとりじゃない。 もう私はひとりじゃないんだ。 そう思うと、涙がとまらなかった。  両親にも感じなかったこの安心感を星苑には感じる。 きっと、記憶をなくす前もこうしてそばにいてくれたんだ。 この人なら信じられると実感した。 ナースが「もうそろそろ面会の時間が終わります」と声をかけ、星苑は「じゃあ、また明日」といって病室を出て行った。 もう麗は涙を流していなくて、微笑んで星苑の後ろ姿を見送っていた。
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