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「俺は、俺だ! 生まれてから変わらない、望月 陽介だ! それ以外、誰だって言うんだよ!?」
「……っ!」
怖い。この身体に、男の人の声って、とても響く。陽介君のたくましい身体つきを知っているから、想像もしてしまえる。
僕は、でも……彼の言葉にも、違和感を感じていた。
女々しい。
その言葉は、今、なんの関係もない。むしろ、男らしい、ってことなんだから、怒るところじゃない。ましてや、変わり始めたって言っている陽介君なら、尚更のはずなんだ。
彼は、女々しいのが、嫌。でも、決して、女らしくはない。それは、三ヶ月前の彼でも、同じだったはずだ。
なのに今は、その言葉に、ひどく怯えているように想えた。
わたしが無言になり、ただ、彼の顔を見つめていると、髪をいじりながら眼を背ける。
「怒鳴って、悪い。帰ろうぜ」
一転、暗い顔で謝る陽介君。
その顔につられて、頷きそうになる自分を、必死に抑える。
「もう少しだけ、話させて」
必死に、ふるえる声をちゃんとして、彼に願う。
さっき少しだけ見えた、彼の苦しそうな表情。
それが、この三ヶ月で大きくなってきた、自分の中の違和感を知ることができるような気がしたからだ。
「僕は、知りたいんだ。記憶を失って、誰も知らなくて、どこか違和感を感じている、この心の意味を」
「それは、記憶がないことへの、不安なんじゃないのか」
「そうなのかもしれない。でも、違う気がする」
自分の胸元を右手で触れ、その違和感の原因を探ろうとする。もちろん、違和感も不安の原因も、なにも伝わってはこない。
あるのは、女性らしい膨らみと柔らかさ、それを受け止める瑞々しい指先だけだ。
――そんなふうに、他人のような目線で今の身体を見ている自分も、違和感の一つではある。
「そして、その違う理由を、陽介君なら知っている気がするんだ」
陽介君は、なにも答えない。先ほどの苦しそうな色も消えて、今はただ無表情に見える。
「それに、そんな日々を支えてくれた、君の顔が……たまに苦しそうなのは、見ていて辛いんだよ」
「苦しそう……そんな顔、浮かべてないはずだがな」
ぶっきらぼうな返答。ただ、短いつきあいだけれど、それが本心でないとわかった。
だから、わたしは想い出しながら、彼に言った。
「わたしが、咲希ちゃんや緑ちゃんと話している時」
「えっ……?」
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