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「そして、あなたが本当の陽介。私が今使っている、この身体の本当の持ち主」
「僕が……陽介君……?」
ぼんやりと呟きながら、頭の中で今の事態を冷静に考えるけれど、うまくまとまらない。
記憶喪失に、身体の入れ替わり。
三ヶ月、いろいろなニュースや本を読んだけれど、そんなのは漫画なんかの世界でしか見たことがなかったのに。
「わたし達、あの日、入れ替わってしまったのよ」
静かに美月ちゃんは、事故当時の状況を話し始める。
目覚めるのは自分の方が早かったこと。
そして、目覚めてから見た自分の顔が……自分のものじゃなく、驚いたこと。
「最初はもちろん、驚きと恐さで、ずっと怯えていたの。だって、そうでしょう? こんな漫画みたいなこと、起きるわけないって、信じたくなるじゃない」
彼女は現実を受け入れられず、病院以外、部屋に閉じこもる生活をしていたと言った。
「具合が悪いって……学校にも、ちょっと行かなかったかな。わかる? 誰にも相談できず、でも、他人の、それも男の子の身体に閉じこめられるって」
想像することしかできないから、僕は、美月ちゃんになにも言えなかった。
「……ごめんなさい。責めているわけじゃないのよ」
開いた手を左右に振って、美月ちゃんは気を使ってくれる。
「だからね、ずっと待っていたの。あなたが起きるのを」
「目覚めた時、いてくれたのも、そういうことなの」
「……閉じこもってばかりも、いられなかったからね」
つまり美月ちゃんは、陽介としての生活を、独りで送っていたんだ。誰にも相談できないままに。
そして彼女は、事情を知るはずの僕に、会いに来た。
「そうしたら、あなたは……記憶がなくなっていた」
「……」
かける言葉が、見あたらない。もし三ヶ月前の望月 陽介が、この頭の中にいるなら、言葉をかけれたかもしれないのに。
『ここは、どこ? 僕は……誰?』。
僕が発したという当時の言葉を、彼女は、どんな気持ちで聞いたんだろうか。
「頭がおかしくなりそうだった。いえ、もしかしたら……少し、おかしくなっているのかも」
口元をつり上げて、笑いながら彼女は話し続ける。
「わたしもね、考えた。入れ替わりなんて、思いこみ。自分が、おかしくなったんだって。本当は陽介のままなのに、幼なじみの美月なんだって、想いこんじゃってるんじゃないかって」
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