しゃべる自動販売機

「いらっしゃいませ。また来てくれたのね。特別にミルクサービスしちゃおうかしら」

「いらっしゃいませ。えっ、トレジャラーブラック？　さすがです。ありがとうございます。みんな、トレブラ入りましたよ！」

「昨日の夢にあなたが出てきたの。あなたがいつも飲んでる、モカの香りのせいかな」

「あなたの顔がミラーから見えない日は、とても寂しい気持ちになるの。どうしてかしらね」

「今日はありがとう。あなたがそっと触れてくれたボタン、とてもドキドキしました。また飲みにきてくださいね」

「成人確認なんて、本当にあっという間の時間。今度のときは、もっとゆっくり、あなたとお話したいわ。またね」

そして今日もまた、自動販売機の前に客が立つ。

何人も、何人も、何人も……。