叫び

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お父ちゃんは何故ミノルが叫んでいるのか分りませんでした どうやら給料は上がらないのに仕事量が増えていることに怒って叫んでいるみたいでした ミノルに限らずに多くの社員は会社に不満を抱いていました 朝早くから夜遅くまで働いてもなかなか昇給しないミノルは入社三十年のベテラン社員でしたが、役職はなく平社員のままでした そんな自分への苛立ちがありました 他の社員への妬みが強かったのです ミノルはいつも不平・不満や怒りを吐き出していました いつも自分自身に対して苛立っていました ベテラン社員のミノルは会社では古株なのに自分よりも後輩が重要な仕事を任せられているのを知り、自分自身がふがいなかったのです でも人事の目は厳しくてミノルには重要な仕事を任せることは出来ないと判断していたのです 古株なのに役職がないミノルでしたが会社での発言力はありました それは後輩をいつもイジメて自分に盾を突かないようにしてきたからでした 自分よりも役職が上になってもイジメの傷が残るほどに新しい社員をイジメていたのです それを誰も咎めるものはいませんでした そんな卑劣な行為が黙認されていたのは、誰もが無力感を感じていたからでした 何をしても無駄だと思っていたのです 会社は社長一族が私物化していました 働けど・働けど出世せず そんな希望がない会社で威張り散らしていた男がミノルだったのです そのイジメは陰湿でした そんなミノルのイジメを新入社員は恐々した気持ちで見ていました ミノルにイジメられた新入社員はミノルへの恨みを感じながらもミノルへの恐れを払拭することが出来ませんでした ミノルの想いは完全に歪んでいました そんな想いを弱い立場の人にぶつけて鬱屈したエネルギーを発散していたのです そんな自分が狂っていたことを知っていたのかも知れませんが、素直に認めるのが怖かったようです ミノルは妬みで心が充満していました 悪い想いを持ち続けていたミノルの運命は変っていきました
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