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言うだけ言って、ランはその場からまた雲のように風のようにいずこかえ消えてしまいましたが。
後に残された茉莉花姫は、自分がここへ来るときに、あの絨毯の上でランが確かに自分に言った言葉を思い出し、ただ、口を開けたまま、天を仰いでおりました。
『お前の、尽きぬ怒りを鎮めてやろう』
……気が付けばどうでしょう。どのような魔法であったのでしょうか。確かにこの日々は屈辱にも近いものでございましたが。
それでも、あのエル・サルディンに居た頃に毎日憂いていたあの怒りはうその胸をこそりとも騒がせなくなっておりましたのでございます。
さて、しかしこの日から。
何故か、茉莉花姫は、ランのその顔を覆うターバンをとって、この男の顔を見たくてしようがなくなってしまったのでございました。
**** ☆ ****
さて、この後も末永く茉莉花姫とランはこの城にて2人で暮らしましたが。
……茉莉花姫がランのターバンを外すことができましたかどうかは、これはまた別の、物語。
ただ一つ申し上げられます事ができますとしましたら。
以降、茉莉花姫は良く笑い良く怒る、もはやけしてただ不機嫌なばかりの姫ではおられなくなったというこの事だけは。
確かに、お伝えできるのでございます。
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